タンパク質の一生 ― 生命活動の舞台裏 (岩波新書) | |
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人の体は約60兆個の細胞からできているというが、その細胞ひとつひとつの内部では、DNAの情報をもとに多くのタンパク質が作られている。もっともアクティブな細胞では、1秒間に数万個のタンパク質が作られるという。それらタンパク質が生成されてから消滅するまでを、主に細胞内での活動にフォーカスして説明した、すばらしい本。
驚くのは、一つの細胞それ自体が、めまいがするような複雑極まりないシステムであることだ。そのシステムの様子が、タンパク質の生成や輸送、消滅の仕組みを説明することによって、語られていく。
この本で私は、今まではっきりしなかった素朴な疑問に対する答えを得た。それは、DNAと染色体との関係である。DNAと染色体は同じものだとは思っていたが、その物理的な関係について述べたものを読んだことがなかった。しかしこの本にはそれがはっきり書かれている。そしてこれにもまた驚くような構造が隠されているのだ。いわく:
DNAは二重らせん構造をしているが、その幅は2nmだという。これがヒストンという円柱状のタンパク質に3回ほど巻きつき、また別のヒストンに3回、また別のヒストンに、というように順に巻きついていく。こうしてできたものが、さらにグルグルとらせん状に折りたたまれる。それがさらに足場となるタンパク質に巻きつき、それをもう一回巻きなおすことで染色体の形になるのだという。このときの幅は1400nmまでになっている。これが細胞核の中に入っているのだ。このようなことは専門書には書かれているのだろうが、啓蒙書のたぐいで書かれているのは初めて読んだ。長年の素朴な疑問が解決して非常にうれしい。
本書には約60兆個の細胞が織り成すシステムには全く触れられていないが、細胞それ自体の複雑なシステムの、おそらく一端にすぎないのだろう、それらについて読んだだけでも、おなかいっぱいである。ここでは詳しく書かないが、ぜひ読んでみて欲しい。図も豊富に挿入されており、理解を進めるのに必須なものとなっている。
そういえば、過去数年、仕事の忙しさやその後の体調不良で読書量が極端に減った時期があったのだが、積んである未読本をチェックすると、この分野の本がやはり見つかった:
分子生物学入門 (岩波新書) 美宅成樹 著 2002年3月発行
パラパラ見てみたが、やはりDNAと染色体についての記述はないようだ。これもすぐに読もう。
昨年末に読んだ宇宙論の本も良かったし、岩波新書は科学系に限ってはまだいい仕事をしているようだ。あと、紙質も変わっているように感じた。いつからなのかな?
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