ユニチャームという会社には、絶えず改良を続けながら、きめの細かい製品展開をしている会社だという印象があります。紙おむつでも、ギャザーやら汗取りやらいろいろな種類のものがありますし、超立体マスクなどは他社にないフォルムです。生理用品も常に小さな改良が加えられているようです。これらの成果が、独自の経営管理による生産性向上の結果だとすればすばらしいことです。
SAPSとはSchedule-Action-Performance-Scheduleの略だそうで、計画立案ー実行ー評価といった一般的に知られている手法と変わりがないように見えますが、他と違うのはその実行の徹底の度合いのようです。まず、SAPS週報というA3サイズの定型フォーマットがあり、全社員があらかじめ立てた半期ごとの目標とそのための戦略に対し、週ごとに進捗確認と見直しを行い、その実現のために次週はどのような行動を取るか30分単位で計画を立てます。これを毎週金曜にある程度の時間をとって作成します。これらは基本的に公開され、部長以上については月曜始業前に社長も出席するSAPS経営会議でレビューされます。これはテレビ会議システムにより世界中の支店を結んで行なわれるもので、参加者の数名のSAPS週報を取り上げて、その中身について参加者全員で意見を述べ合う他、週報の記入方法についても、ツールとしての文章表現の共通化について指摘するなど、きめ細かいものになっているそうです。この会議は必ず毎週行なわれるそうです。
普通の企業では、会議時間の浪費や資料作成に費やす時間・労力の無駄について議論されることが多く、上記のような内容を実行するのは困難を伴うはずです。しかしながらユニチャームがうまくいっているのは、その実行によって目に見える成果が出ていることが大きいといいます。また30分単位での行動立案についても、上から管理されるのではなく、自分で立案する形なのも大事です。さらに、この実行当初は経営陣から導入を始め、次第に一般社員へと拡大していった、という導入方法も、成功した理由だと思います。
成果主義を導入した日本企業が、10年ほどたって、どうもうまくいかないな、という理由は、これが現場に近い社員たちの固定費削減の手段となってしまい、管理職以上の社員の生産性向上に結びついていないことが大きいと思います。現場の社員にしてみれば、自分たちは厳しく評価されるのに対し、上司たちは相変わらず業務時間に新聞を読んでいるだけだったりすれば、不公平感は非常に大きなものとなります。そもそも若い社員の何倍もの年収がある管理職の生産性がその比率に見合っていないことが、会社全体の生産性を下げる結果になっているわけで、日本企業のほとんどがそこにメスを入れられていないのです。それに対し、ユニチャームの行なっている手法は、管理職に対しても、自分の業務に対しある時間をかけて徹底的に考えさせ、その結果が社長によって毎週評価されるという、とても厳しい状況に置かれているわけで、いきおい自分の能力を100%発揮せざるを得ず、その結果として成果も上がるという、好循環になっているようです。
ユニチャームの製品というのは、必ずしも技術オリエントではないように見え、社員の目標管理は難しそうに思えますが、結局ものづくりであることに変わりはなく、したがってその業務に適した管理手法を用いれば生産性は向上できる、いい例であるといえるでしょう。