韓国の先発ピッチャーは、北京オリンピックできりきり舞いさせられた、サウスポーのキムグァンヒョンでしたが、日本の1番バッター イチローが、キムのウィニングショットであるスライダーをライト前にはじき返すと、ここまでノーヒットだったイチローの一打を首を長くして待っていた東京ドームの大観衆から大きな歓声が沸きあがり、これで日本のいけいけムードを一気に作り上げたといってよいでしょう。ホームランは4番村田の3ランと城島の2ランがありましたが、ヒット、フォアボールをからめ、大差になっても集中を切らさない各選手の丁寧な攻撃により、結果的に大量得点となりました。
日本の先発ピッチャーは松坂。1回裏はスライダーのコントロールがままならず、韓国の4番に2ランホームランを浴びますが、2回以降はシュートやカットボールを多投するスタイルに切り替え、4回を2点のみに抑えました。その後の継投も問題なく無得点に抑え、歴史的な勝利を導きました。
韓国チームはおそらく、明日の中国との試合を勝ちあがって、再び月曜日の試合で日本チームとA組1位の座を争うことになるでしょう。そして、両チームとも第2ラウンドに進むと、同じ1組に入ることが決まっていますから、第2ラウンドでさらに2回対戦する可能性があります。今日大勝したとはいえ、韓国の実力は疑いのないところですから、対戦全てで勝つことは難しいと思います。そうすると、全ての対戦で全力で勝ちに行く必要があるのか、いわゆる捨てゲームのようなものを考えてもいいのではないか、という議論が出てきます。
事実、前回のWBCでは、日本は韓国に第1ラウンド・第2ラウンドで2敗しましたが、準決勝で勝ち、結果として優勝できました。このことから考えると、肝心なところで勝てばいいのだ、という意見は一見もっともらしく聞こえます。
しかし問題は、実力が拮抗した相手との真剣勝負の中で、肝心なところで勝つ、というようなことが、こちらの意思で自由にできるのか、という点にあります。北京オリンピックでの敗北について、キャプテンだった宮本選手は、決勝トーナメント進出のために予選リーグは1敗しても良いので余裕を持って戦おう、というメンタルが、結局肝心なところでトップフォームにならなかった原因だ、あれは失敗だったと述べています。サッカーのワールドカップや欧州選手権でも、予選リーグ3試合のうち2試合に勝って決勝トーナメント進出を決めたチームが、予選リーグ3試合目で主力を休ませても、結局トーナメント1試合目で調子が出ずに敗れることが多く見られます。やはり勝負事はどんなときでも全力で戦うことが必要なようです。
つまり、韓国とは全ての試合を全力で戦い、その結果は時の運、ということになるのでしょう。いずれにしても、今日はとてもいい試合でしたので、選手の皆さんはこれからもぜひがんばっていただきたいと思います。