アメリカではここ10年ほど、ミツバチの集団失踪が問題となっていたそうですが、それが広く知られるようになったのは、2007年にNewYorkTimesが報じてからだと思います。その原因はいまだ不明ですが、何らかの細菌が原因ではないか、というようなことが報じられていた記憶があります。が、今回の日本の報道では、細菌についてはほとんど触れられておらず、新しく使用され始めた農薬のせいではないか、というようなことが報じられています。
ミツバチがいなくなると、その直接の生成物であるはちみつやプロポリスが取れなくなることが考えられますが、ある意味もっと影響があるのは果物です。果樹園などでは、昔は受粉させるのを人手で行なっていました。人が花の一つ一つを触って花粉をつけるわけで、これが大変な作業だったのです。それをミツバチにやってもらうことによって、作業が簡略化されるとともに、収穫量も大きく上がったということです。農家は養蜂家からミツバチを1箱借りて、ビニールハウスの中においておく。するとミツバチたちはせっせと花から蜜を集め、その際に受粉作業をやってくれる。ところが現在はミツバチの不足によって、ミツバチの借用料が高騰しているばかりか、借りられないことさえあるということです。
農水省はミツバチの不足を補うために、外国産の女王蜂の輸入、とくにしばらく輸入禁止となっていたアルゼンチン産の女王蜂の輸入を考えているといいます。しかしアルゼンチン産のミツバチは気性が荒く、輸入して繁殖すると人間に被害を及ぼす可能性があるということで、慎重な検討が必要のようです。
ちょっと不思議なのは、今回の日本のミツバチ大量失踪に関するテレビ報道で、以前から起こっていたアメリカに関することを報じている番組がほとんどないことです。アメリカでもここ数年大きな問題になっているのですから、その原因究明の経過と照らし合わせて日本ではどうなっているのか、とか、日本で入手できるハチミツのほとんどは中国産ですから、中国ではどうなのか、など、報道の切り口はいくらでもありそうなものですが、そのような報道はとんと見かけません。やはり日本のテレビ報道は終わっているな、とここでも感じました。