2009年06月01日

アイズリーブラザーズ(The Isley Brothers)

アイズリーブラザーズ(The Isley Brothers) も日本では本国の実績が正当に認識されていないグループの1つである。活動暦は1950年代初頭から現在までと長く、今から彼らの音楽に取り組むとなると、どこから手をつけていいのか悩ましいが、そのキャリアを大きく3つに分けるとわかりやすいかもしれない。

まず、グループ結成から1969年モータウン在籍時代まで。彼らはグループ名が示すとおりオハイオ州シンシナティで生まれ育った兄弟によるグループで、初ヒットは59年の「シャウト」。62年には「ツイストアンドシャウト」がヒットし、63年にはこの曲をビートルズがカバーして大ヒットさせた。また、このころジミヘンドリクスがレコーディングに参加している。

続いて、1969年から1983年まで、自らのレーベル:T-Neckで活躍した時代。それまで兄弟3人のR&Bボーカルグループだった彼らは、バックバンドとして弟2人といとこの3人を加え、計6人のセルフコンテインドグループとなる。この6人の結束は、配給がブッダからCBSに変わるとともに、充実したファンクと、目利きの効いたカバーチューン、そしてその後のクワイエットストームを生んだといわれるメロウなナンバーで、幅広い音楽性を披露した。

6人の固い結束が数々のヒットを生んだ彼らだが、1983年に若い3人がアイズリージャスパーアイズリーとして独立、グループは分裂した。年上の3人はワーナーブラザーズに移籍し、クワイエットストーム路線を突き進んだ。その後、正式な解散宣言のないまま、現在に至る。

今回、第2期のCBS時代のアルバムがEPIC/Legacyレーベルからリイシューされており1000円以下の安価で入手できることを知り、まとめて4枚を聞いてみた。アイズリーブラザーズ未体験の方は、ここらへんから手をつけるといいと思う。
3 + 3 (1973)
3 + 3
Live It Up (1974)
Live It Up

The Heat Is On (1975)
The Heat Is On

Harvest for the World (1976)
Harvest for the World


これらのアルバムを聞いてみると、なぜあの当時、このグループが日本で評価されなかったのか、まったく理解できない。が、その頃のことを思い出してみると、当時の日本の評論家たちはこんなことを言っていた:ソウルミュージック、R&Bミュージックには志がないといけない。これには1970年代初頭におけるニューソウルが念頭にあるのだと思うが、その流れにないものは良いものではない、という発想だ。したがって、カバー曲が多く主張がない(と思われた)アイズリーズや、ダンスに徹したサルソウル、何をやっているのかわからないPファンク、そしてその後のフュージョン系など、ことごとく無視同然の扱いを受けていた。さらには、レーベルの経営状態が良くないから、音楽にも聞くべきものはない、というようなことも平気で言われた。T-Neckもサルソウルも確かそんな文脈のなかで語られたという記憶がある。しかし、もし彼らが音楽に対する自由を求めて独立したのだとすれば、大きなお世話だし、失敗を許さない日本独特の考え方だなあ、というのが、今になって改めてわかる。現在では、そんな偏見はないと思うし、日本のレコード会社も売れるものを探すのに必死で、今の日本のエセR&Bに「志が…」などという人間はいないはずであるから、安心して私アイズリーズ聞いてますよ、サルソウルもPファンクも聞いてますよ、と公言することができる。

私は知らず知らずのうちに鼻歌を歌っていることがあるが、気がついてみるとそれは「Harvest For The World」であったり「Summer Breeze」(「3+3」収録)であったりして自分で驚くことがある。そのぐらいいい曲を作ってきた彼らであり、アイズリーズ未体験は本当にもったいない。今後は、第3期のクワイエットストームのアルバムも入手したいと思っている。

2010年11月10日追記:
アイズレーブラザーズのT-Neckレーベルの全アルバムが、ソニーから紙ジャケットで国内盤リイシューされるというビッグニュースが入ってきました! 本日11月10日に5タイトル、11月24日に6タイトル、12月22日に6タイトル、順次リリースされます。
(HMV Onlineのアイズレーブラザーズ特集ページはこちら icon)
音源は、本エントリで紹介したEPIC/Legacyレーベルでリイシュー済みのものは、(ボーナストラックも含め)そのリマスター音源がそのまま使われているようですが、その他のものは新たにリマスターされるようです。価格も通常のCD素材で2000円を切る価格設定で、音源・価格とも、某レーベルのボッタクリ路線と異なり、良心的です。
ここで注目すべきは、T-Neckレーベルでの最終作であり、タイトル作がなんといっても有名な「Between The Sheets」です。このアルバムは今までも入手可能だったものの、CDの最初期(HMVの記事によると1991年)にCD化されてからリマスターされていないままでした。私自身、このことに気づいていて、このアルバムのリマスターを待っていた時期もあったのですが、我慢しきれず、古い音源と知りながら購入した、という経験があります。その他のアルバムはUKからリイシューされるなど、何らかの形でリマスター音源でリリースされてきたのですが、なぜかこの「Between The Sheets」だけ漏れていたので、今回のリイシューは待望のリリースです。
アイズリーズ未経験の方は、入手しやすくなったこの機会に、ぜひ1枚でも入手して体験してみることをお勧めします。また、実は海外盤では、2in1盤も流通しているようなので、懐と相談しながら国内盤と海外盤をうまく選択するのもお勧めです。



posted by beverlyglen2190 at 19:16 | Comment(0) | ミュージック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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