まず驚いたのは、大学固有の試験や面接などを行わず、全て書類のみで合否を決めるということです。これは、日本の大学受験しか知らないものにとっては、信じられないといってもよいでしょう。では、どんなものを提出すればいよいのでしょうか。
成績関係としては、大学時代の成績証明書、TOEFLの結果、GREの結果、があります。TOEFLは米国以外の国からくる留学受験者に課せられる英語の試験、GREは大学卒業程度の学力があることを証明する試験で、ともに日本で受験できます。それぞれどのくらいの成績が必要かは、各大学が公表していますので、それをクリアしている必要がありますが、たとえ最難関の大学院であっても、これらの成績はそんなに高いものが要求されるわけではありません。
より重要なのは、Statement of Purposeという書類と、2通あるいは3通の推薦状です。あえていうと、大学の成績やTOEFL,GREは単なる足切りの役目しかなく、合否の判定は主にこの2種類の書類によって行われるそうです。
日本人的な感覚では、大学にはお願いして入れてもらうもの、というような感じがあると思いますが、アメリカではまったく異なります。特に大学院では、もちろん学費は払うわけですが、最終的に大学は学生に学位という貴重なものを与えるわけですから、それに対してあなたは大学にどのようなメリットを与えることができますか、というスタンスです。つまり、Statement of Pueposeにはあなたがどのような特技や技能を持っていて、大学に対してどんな貢献ができるかということが書かれていなければなりません。これは大学卒業程度の日本人にとっては信じられないことかもしれませんが、これが欧米社会の考え方です。自己主張のできない人は欧米では生きていけません。したがって、でっち上げてでもそのような内容を書き込んでいく必要があります。これはアメリカ人も同じで、大学卒業程度なら日本人学生より能力が勝るとは思えませんが、ストーリーを組み立てて自己アピールをする能力はあきれるほどです。つまり、我々も卑下したり謙遜したりすることなく自分をアピールする文章を書けばいいわけです。そして、推薦状の内容がそれを補強するものであればさらに効果的であるといえます。
以上は10年以上前の私の経験に基づいた内容であり、他の分野や文系などの学校では事情が大きく異なるかもしれません。また、9.11の同時多発テロ以降は、アメリカでは留学生受け入れに対する考え方が大きく変わったとも聞いています。したがって、真剣に留学を考えている方は、最新の情報を確認してください。

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